5S改善事例:台車の位置決め

【結果/効果】

(なにが)
作業台車の位置決めによって動かすムダが減った。
(どうなった)
1日30秒短縮
1カ月あたり:600秒削減

【専門家コメント】

作業台車が決まった位置に置かれず、
通路や作業エリアに無秩序に配置され、
他の作業の邪魔になり移動させる必要があった状態から、
床面に黄色のラインテープで台車専用の定位置を
明確にマーキングすることによって、
台車の正しい位置を誰でも一目で判断できるようにした改善ですね!

これにより、台車の放置による通行の妨げがなくなり、
作業の流れがスムーズになっただけでなく、
安全性の向上にもつながる重要な改善 です。
職場環境の見える化、ありがとうございました!

ただし、このラインが本当に機能し続けるか?
考えてみることが次のステップです。

たとえば、

  • ラインテープが剥がれたり薄くなった場合の貼り替えルールは?
  • 誰がどのタイミングで定位置に戻すのか明確になっているか?
  • 新しい台車が増えたときにも同じルールが適用できるか?

ただ「貼っただけ」では、数ヶ月後には元に戻ってしまう例も多くあります。
維持・運用のルールを作り、標準化につなげていくことが鍵です。

次回の改善報告では、
「改善を継続させるための管理仕組み」 にも踏み込んだ取り組みを期待しています!

では今回の改善を、辛口評価で丁寧に見ていきます。


(1)成果の大きさ

台車の放置による作業妨害や通行の妨げを解消し、
作業の流れと安全性の両方を改善した点は評価できます。
ただし、業務全体の大幅な効率改善というほどのインパクトではなく、
「満足のいく成果である改善」と判断します。
B(12点)

(2)改善の独自性

床面マーキングによる定位置管理は、
5S活動では最も基本的かつ広く使われている手法の一つです。
誰でも思いつく内容であり、新規性は低いです。
D(4点)

(3)改善の難易度

ラインテープを貼る作業は短時間ででき、
特別な道具や技能も不要です。
「数分でできた改善」と評価します。
D(4点)

(4)清潔レベル

テープが剥がれたり、色あせたりすることで定位置が曖昧になり、
再発する可能性があります。
貼っただけでは維持が難しいため、
「何かのきっかけで再発する改善」と評価します。
C(8点)

(5)習慣(しつけ)レベル

台車を必ず戻すルールや、定位置確認の点検などの
運用ルールが記載されていないため、
使う人の判断に委ねられてしまいがちです。
したがって、これは「習慣化を促さない単発的な改善」と評価します。
D(4点)


合計点数:

12(成果) + 4(独自性) + 4(難易度) + 8(清潔) + 4(習慣) = 32点

5Sレベル:C(31~45点)


✅ 評価まとめ

今回の改善は、「基本的で即効性はあるが、維持管理の仕組みが伴っていない改善」 です。
定位置表示は視認性の向上とルール明示に有効ですが、
「運用と管理の仕組み」がなければ、すぐに形骸化してしまいます。


✅ 次の改善ステップとして考えるべきこと

  • ラインの点検と貼り替えルールを明確にする
  • 台車を戻すタイミングと責任者を明確にする(使った人が戻すルール)
  • 台車の数や使用頻度に応じて、定位置を見直すルールを作る

「貼るだけの改善」から一歩進んで、
「守り続けられる仕組みづくり」 に挑戦していきましょう!

次回の改善報告では、ルール化・標準化 にも取り組まれた内容を期待しています!

この記事を書いた専門家

 大手総合電機メーカーで20年間経験を積んで平成22年に独立。13年間で700社を超える中小企業支援、そして自らも小売業を立ち上げて業績を安定させた実績を持つ超現場主義者。小さなチームで短期的な経営課題を解決しながら、中長期的な人材育成を進める「プロジェクト型課題解決(小集団活動)」の推進支援が支持を集めている。

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