5S改善事例:動作の無駄の改善

【結果/効果】

(なにが)
棚に置場を作成した
(どうなった)
距離が近くなり持ち上げなくて良い
距離 2m⇒0m
   10秒⇒0秒
月 10回 100秒
年 1,200秒
1,200円の削減

【専門家コメント】  

油缶が材料置場の後ろ側にあり、
取り出すために2mの移動距離と持ち上げ動作が必要だったのを、
専用の棚を設置して油缶の置き場所を作成し、
アクセスしやすい位置に配置することにより、
持ち上げ動作も不要になったと同時に、
作業者の身体的負担も大幅に軽減した改善ですね!

作業の無駄な動作を削減し、効率化を図るとともに、
重い油缶の持ち上げをなくすことで、
安全性の向上にも貢献している点は素晴らしいです。
良い視点での改善、ありがとうございました!

しかし、この改善は今後も維持できるでしょうか?

例えば、

  • 油缶の置き場が乱れたり、他のものが置かれてしまうリスクはないか?
    → 定位置を明示し、「油缶専用」と表示する工夫は?
  • 新しい油缶が追加された場合、スペースに余裕はあるか?
    → 今後の増減に対応できるレイアウトになっているか?
  • 油缶の補充ルールは明確か?
    → 誰がどのタイミングで補充し、適切に管理するのか?

ただ「置き場所を変えた」だけでは、
時間とともに元の状態に戻るリスクがあります。
「長期的に維持できる管理ルール」 を考え、
さらなるレベルアップを目指してみてください!

次回の改善報告では、「維持・標準化の工夫」 にも踏み込んだ取り組みを期待しています!

目次

5Sレベルの評価

今回の改善を5Sレベル評価でチェックします。

(1)成果の大きさ

油缶の移動距離と持ち上げ動作を削減し、
作業効率の向上と作業者の負担軽減を実現した点は評価できます。
特に、安全性向上に貢献した点は大きなメリットです。
しかし、作業全体への影響は限定的なため、
「やや大きい成果」と評価します。
A(16点)

(2)改善の独自性

専用の棚を設置し、アクセスしやすい位置に配置するという方法は、
整理・整頓の基本的な考え方であり、特に目新しさはありません。
他の職場でも多く見られる改善のため、
「よく似たタイプが多い改善」と評価します。
C(8点)

(3)改善の難易度

専用棚を設置する作業には多少の時間や手間はかかりますが、
特別な技術を要するものではなく、標準的な作業範囲です。
B(12点)

(4)清潔レベル

油缶専用の棚を作成したことで一時的には整理されたものの、
時間が経つと他のものが置かれたり、
油缶の配置が乱れる可能性があります。
「何かのきっかけで再発する改善」と評価します。
C(8点)

(5)習慣(しつけ)レベル

今回の報告では、油缶の補充ルールや定期チェックの仕組み について触れられていません。
つまり、「維持するためのルールが確立されていない」 状態です。
このままでは、時間とともに元の状態に戻るリスクが高いため、
「習慣化を促さない単発的な改善」と評価します。
D(4点)


修正後の合計点数:

16(成果) + 8(独自性) + 12(難易度) + 8(清潔) + 4(習慣) = 48点

5Sレベル:B(46~65点)

→ 評価のポイント:
✅ 作業効率と安全性の向上には貢献している(A評価)。
✅ しかし、ありふれた手法であり、新規性には乏しい(C評価)。
✅ 改善策自体は標準的な作業で、実行は容易(B評価)。
✅ しかし、維持管理の仕組みが整っておらず、再発のリスクがある(C評価)。
✅ ルールの標準化がされていないため、習慣化につながらない(D評価)。


今後の課題として考えるべきポイント

油缶の定位置を明確にし、「油缶専用」と表示する
新しい油缶が追加されたときの管理ルールを決める
油缶の補充や定期点検の仕組みを作り、運用を標準化する

せっかくの改善を「一時的なもの」で終わらせず、
「持続可能な管理の仕組み」 を導入し、
より高いレベルの改善を目指しましょう!

次回の改善報告では、「維持管理のルール作り」 にも踏み込んだ取り組みを期待しています!

この記事を書いた専門家

 大手総合電機メーカーで20年間経験を積んで平成22年に独立。13年間で700社を超える中小企業支援、そして自らも小売業を立ち上げて業績を安定させた実績を持つ超現場主義者。小さなチームで短期的な経営課題を解決しながら、中長期的な人材育成を進める「プロジェクト型課題解決(小集団活動)」の推進支援が支持を集めている。

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